2012年のブナの全国結実状況
林分の平均胸高直径階級、および林分標高階級と結実率階級の関係
○2012年に結実が観察された調査林分は北海道1カ所、東北1カ所、関東11カ所、北陸1カ所、中部3カ所、関西2カ所、中国0カ所、四国3カ所、九州1カ所の計23林分であった。全調査林分の26%で結実が認められた。残りの74%の林分でほとんど結実しなかった。
○2012年の結実林分の割合は1996年(23%;佐藤,1997)や1998年(28%;佐藤,1999)、2006年(24%;佐藤,2007)や2010年(22%;佐藤,2011)とよく似ていたが、結実率8-10の豊作林分の割合(6%)は、1998年(9%)や2010年(2%)に近い値であった。北陸地方の結実状況は立山の桑谷林分を除くすべての調査林分で結実率=0であった。全国的に見ると、日本海側の東北地方南部から北陸、関西、中国の日本海側に近い林分と九州で凶作であった。北海道と東北、関西と中国、四国と九州をそれぞれまとめて1つの地域とし、結実率=0と結実率≧1の分布においてχ二乗検定を行うと、地域によってに結実林分と結実しなかった林分の割合に有意な差が認められた(χ2cal=36.8,P<0.01)。
○有効な果実の散布が行われていると考えられる結実率3以上(佐藤,2002)の林分は14カ所で、全調査林分の16%であった。これらの林分は関東と中部、関西の一部に限られていた。
○林分の平均胸高直径と結実率の関係を上に示した。胸高直径が20−39cm階級の調査林分数は46林分(全体の51%)で、その内の30%で結実が観察された。40−49cm階級の調査林分数は27林分(30%)で、その内の18%で結実が観察された。50-99cm階級の調査林分数は17林分(19%)で、その内の24%で結実が観察された。3つの直径階級間に結実率の違いがあるかどうかをχ二乗検定を行った。その結果、結実率=0と結実率≧1の分布において、直径階級による違いは認められなかった(χ2cal=1.31,P>0.05)。
○林分が立地する標高階級と結実率の関係を上に示した。0-499m階級の林分は19カ所あり、その内2カ所で結実率≧1であった。500-999m階級の林分は35カ所あり、その内8カ所で結実率≧1であった。1000-1499m階級の林分は29カ所あり、その内9カ所で結実率≧1であった。1500m以上の階級は7カ所あり、結実率≧1は4カ所であった。標高階級による結実率の割合に有意な違いは認められなかった(χ2cal=6.5,P>0.05)。しかし、結実率0の割合は標高が低い林分で多く、標高が高い林分で少ない傾向が見られた。