2015年のブナの全国結実状況
林分の平均胸高直径階級、および林分標高階級と結実率階級の関係
○2015年、全調査林分の92%で結実が認められた。結実が観察されなかった林分は、東北1カ所、関東2カ所、北陸3カ所、中国1カ所の計7林分だけであった。
○調査を開始した1993年以降では、2015年の調査林分数に対する結実林分数の割合は、1993年(91%,佐藤;1994)や2013年(90%,佐藤;2014)より大きく、これまでで最も多くの場所で結実が観察された年となった。結実率8-10の豊作林分の割合(57%)は、1993年(70%,佐藤;1994)に次ぐ大きい割合であった。結実状況(結実率階級度数分布)は1993年(佐藤,1994)とよく似ていた。
〇有効な果実の散布が行われていると考えられる結実率3以上(佐藤,2002)の林分は78カ所で、全調査林分の87%であった。これらの林分も総ての地域に分布していた。
〇林分の平均胸高直径階級と結実率の関係を図3に示した。胸高直径が20-39cm階級は17林分(全体の13%)で、94%の林分で結実が観察された。40-49cm階級は24林分(51%)で、その内の83%で結実が観察された。50-99cm階級は49林分(36%)で、その内の96%で結実が観察された。3つの胸高直径階級間に結実率(結実率=0と結実率≧1の分布)の違いがあるかどうかをχ二乗検定を行った。その結果、3つの直径階級による違いは認められなかった(χ2cal=3.66,P>0.05)。このことから、林分の平均胸高直径の大きさによる豊凶の違いは認められなかった。
〇林分が立地する標高階級と結実率の関係を図4に示した。0-499m階級は16林分で、その内12林分で結実が認められた。500-999m階級は34林分で、その内33林分で結実が認められた。1000-1499m階級は34林分で、その内32林分で結実が認められた。1500m以上の階級は6林分で、総ての林分で結実が認められた。林分の立地標高階級による結実率の割合に有意な違いは認められた(χ2cal=8.40,P<0.05)。立地標高が500m未満の階級の林分では、結実林分の割合がそれ以上の階級の林分より少ない傾向が認められた。
〇日本海側(図1の破線より左側の62林分)と太平洋側(図1の破線より右側の28林分)のブナ林で、結実林分の割合を比較すると日本海側が92%、太平洋側が93%で、統計的にも有意差は認められなかった(χ2cal=0.075,P>0.05)。