2016年のブナの全国結実状況
林分の平均胸高直径階級、および林分標高階級と結実率階級の関係
〇アンケートの回答は38名の方から得られ、調査林分は79カ所であった。回答のあったブナ林分は北海道が2カ所、東北地方が9カ所、関東地方が11カ所、北陸が34カ所、中部が6カ所、関西地方が4カ所、中国地方が4カ所、四国地方が4カ所、九州地方が5カ所であった。
〇2016年に結実が観察された調査林分は、北海道1カ所、関東3カ所、北陸17カ所、中部1カ所の計24林分であった。全調査林分の30%で結実が認められた。
〇調査を開始した1993年以降では、2016年の調査林分数に対する結実林分数の割合(30%)は、2001年(30%;佐藤,2002)や1997年(29%;佐藤,1998)とよく似ていた。
〇有効な果実の散布が行われていると考えられる結実率3以上(佐藤,2002)の林分は13カ所で、全調査林分の16%であった。これらの林分は関東、北陸、関西の地域に分布していた。
〇林分の平均胸高直径階級と結実率の関係を図3に示した。胸高直径が20-39cm階級は16林分(全体の13%)で、31%の林分で結実が観察された。40-49cm階級は23林分(51%)で、その内の17%で結実が観察された。50-99cm階級は40林分(36%)で、その内の38%で結実が観察された。3つの胸高直径階級間に結実率(結実率=0と結実率≧1の分布)の違いがあるかどうかをχ二乗検定を行った。その結果、3つの直径階級による違いは認められなかった(χ2cal=2.80,P>0.05)。このことから、林分の平均胸高直径の大きさによる豊凶の違いは認められなかった。
〇林分が立地する標高階級と結実率の関係を図4に示した。0-499m階級は15林分で、その内7林分で結実が認められた。500-999m階級は29林分で、その内13林分で結実が認められた。1000-1499m階級は30林分で、その内4林分で結実が認められた。1500m以上の階級は5林分で、総ての林分で結実が認められなかった。林分の立地標高階級による結実率の割合に有意な違い認められた(χ2cal=11.05,P<0.05)。立地標高が1000m未満の階級の林分では、結実林分の割合がそれ以上の階級の林分より多い傾向が認められた。。
〇日本海側(図1の破線より左側の54林分)と太平洋側(図1の破線より右側の25林分)のブナ林で、結実林分の割合を比較すると日本海側が35%、太平洋側が20%で、統計的な有意差は認められなかった(χ2cal=1.33,P>0.05)。