2019年のブナの全国結実状況
林分の平均胸高直径階級、および林分標高階級と結実率階級の関係
〇アンケートの回答は36名の方から得られ、調査林分は73カ所であった。回答のあったブナ林分は北海道が2カ所、東北地方が6カ所、関東地方が9カ所、北陸地方が34カ所、中部地方が5カ所、関西地方が4カ所、中国地方が4カ所、四国地方が5カ所、九州地方が4カ所であった。これらの調査林分の分布は、日本におけるブナの分布地域の大部分をカバーしていた。
〇2019年に結実が観察された調査林分は、北海道1カ所、北陸8カ所、中部2カ所、関西1カ所の計6林分であった。全調査林分の16%で結実が認められた。残りの84%の林分でほとんど結実しなかった。このことから2019年は全国的にブナの凶作年であったと推定される。
〇調査を開始した1993年以降では、2019年の調査林分数に対する結実林分数の割合(16%)は、1994年(5%)や2004年(9%)に次いで小さい値であった。
〇有効な果実の散布が行われていると考えられる結実率3以上(佐藤,2002)の林分は6カ所で、全調査林分の8%であった。これらの林分は北海道奥尻島と石川県、静岡県に分布していた。
〇林分の胸高直径階級と結実率の関係を図3に示した。胸高直径が20-39cm階級は12林分(全体の16%)の内1林分(8%)で、40-49cm階級は22林分(30%)の内3林分(14%)で、50-99cm階級は39林分(53%)の内8林分(20%)で、それぞれ結実率が1以上であった。3つの胸高直径階級間の結実率の分布(結実率<1と結実率≧1)に有意差は認められなかった(χ2cal=1.17,P>0.05)。
〇林分が立地する標高階級と結実率の関係を図4に示した。0-499m階級は13林分の内2林分(15%)で、500-999m階級は28林分の内5林分(18%)で、1000-1499m階級は25林分の内5林分(20%)で、それぞれ結実率1以上であったが、1500m以上の階級は7林分すべてで結実が認められなかった。林分の立地標高階級による結実率の分布に有意な違い認められなかった(χ2cal=1.66,P>0.05)。